花形歌舞伎・昼の部
11月16日 新橋演舞場
花形歌舞伎というと、「平成の三之助」でちょっと前までは海老蔵も入っていて、そうすると海老蔵が一人どうにも下手なくせにオーラだけは誰よりも強い(苦笑)というバランスの悪さが目に余ったが、今回は海老蔵が抜けて染五郎、亀治郎に愛之助が加わるという形になり、脇の若手もそこそこ揃って花形なりになかなか安定感のある公演となった。
一・通し狂言
盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
序 幕 佃沖新地鼻の場
深川大和町の場
二幕目 二軒茶屋の場
五人切の場
大 詰 四谷鬼横町の場
愛染院門前の場
染五郎の薩摩源五兵衛・実は不破数右衛門/家主弥助、菊之助の笹野屋三五郎、亀治郎の芸者小万、愛之助の六七八右衛門
これまでに観たことがあるのは吉右衛門と仁左衛門の源五兵衛。二人に比べるのは気の毒だが、染五郎は当然すごく若い。その若いエネルギーで殺し、特に小万殺しの場をやると、なんだか必要以上にリアルに感じられて観ていてなんだかものすごく陰惨な感じがしてしまった。そう思わせることが、この芝居で成功なのかどうかはわからないのだが、吉右衛門がやれば凄みの中にそれでも「芝居ッ気」があり、仁左衛門なら殺してもなお捨てきれない小万への愛情が見えたが、染五郎ではただひたすら復讐の鬼と化した男の怖さだけが見えて救いがない。まあ、南北の話自体、殺人鬼が実は赤穂義士、と言うどうしようもないパラドックスで、救いようのない話だからそれで良いのかもしれないのだが、なんだかしんどかった。
家主弥助と源五兵衛を早変わりでやるというのは初めて観たが、落差が大きくてこれはこれで面白い趣向ではあったが、ごうつくな家主というのは染五郎のニンではなく、いささか苦しい。
亀治郎は色気もあり、芸者らしいあだな雰囲気もあってなかなか。だが源五兵衛への申し訳ない気持ちがあまり感じられず、一歩間違うと特に大詰めでのなりだと悪婆に見えてしまいそう。
菊之助が、若衆などでない大人の男の役というのはあまり観たことがなかったので、始めのうちはちょっと違和感があったが、だんだん良くなってきて二幕目で源五兵衛に小万と自分が夫婦だとばらすところなど、気っ風の良さが見えて上々。この人は声が凛としているので立ち役でも気持ちが良い。これからお父さんの役どころをどんどんこなしていくことだろう。
愛之助が、実直で人の好い忠義な家来の味があってうまい。
梅枝、松也ら若手も健闘していてなかなかの充実ぶり。
そして亀蔵、竹三郎、家橘といったベテランがしっかり脇を固めていた。
二・四変化弥生の花浅草祭
松緑の武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精、愛之助の神功皇后/善玉/通人/獅子の精
松緑と愛之助がこうして二人で踊るのは初めてだそう。そういえば同じ芝居に出ることもあまりなかったかも。
二つ目の「悪玉・善玉」と最後の「石橋」はそれぞれ単独で観たこともあるが他は初めて。それぞれ全く違った趣の踊りだが、二人が息のあったところを見せてなかなか楽しめた。特に松緑の踊りがきりっとして粋で上手い。獅子の毛振りもやはり松緑の方に勢いがあって一日の長が見られる感じだったが、愛之助も身のこなしが柔らかくきれいな踊り。これからこのコンビも面白そう。

花形歌舞伎というと、「平成の三之助」でちょっと前までは海老蔵も入っていて、そうすると海老蔵が一人どうにも下手なくせにオーラだけは誰よりも強い(苦笑)というバランスの悪さが目に余ったが、今回は海老蔵が抜けて染五郎、亀治郎に愛之助が加わるという形になり、脇の若手もそこそこ揃って花形なりになかなか安定感のある公演となった。
一・通し狂言
盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
序 幕 佃沖新地鼻の場
深川大和町の場
二幕目 二軒茶屋の場
五人切の場
大 詰 四谷鬼横町の場
愛染院門前の場
染五郎の薩摩源五兵衛・実は不破数右衛門/家主弥助、菊之助の笹野屋三五郎、亀治郎の芸者小万、愛之助の六七八右衛門
これまでに観たことがあるのは吉右衛門と仁左衛門の源五兵衛。二人に比べるのは気の毒だが、染五郎は当然すごく若い。その若いエネルギーで殺し、特に小万殺しの場をやると、なんだか必要以上にリアルに感じられて観ていてなんだかものすごく陰惨な感じがしてしまった。そう思わせることが、この芝居で成功なのかどうかはわからないのだが、吉右衛門がやれば凄みの中にそれでも「芝居ッ気」があり、仁左衛門なら殺してもなお捨てきれない小万への愛情が見えたが、染五郎ではただひたすら復讐の鬼と化した男の怖さだけが見えて救いがない。まあ、南北の話自体、殺人鬼が実は赤穂義士、と言うどうしようもないパラドックスで、救いようのない話だからそれで良いのかもしれないのだが、なんだかしんどかった。
家主弥助と源五兵衛を早変わりでやるというのは初めて観たが、落差が大きくてこれはこれで面白い趣向ではあったが、ごうつくな家主というのは染五郎のニンではなく、いささか苦しい。
亀治郎は色気もあり、芸者らしいあだな雰囲気もあってなかなか。だが源五兵衛への申し訳ない気持ちがあまり感じられず、一歩間違うと特に大詰めでのなりだと悪婆に見えてしまいそう。
菊之助が、若衆などでない大人の男の役というのはあまり観たことがなかったので、始めのうちはちょっと違和感があったが、だんだん良くなってきて二幕目で源五兵衛に小万と自分が夫婦だとばらすところなど、気っ風の良さが見えて上々。この人は声が凛としているので立ち役でも気持ちが良い。これからお父さんの役どころをどんどんこなしていくことだろう。
愛之助が、実直で人の好い忠義な家来の味があってうまい。
梅枝、松也ら若手も健闘していてなかなかの充実ぶり。
そして亀蔵、竹三郎、家橘といったベテランがしっかり脇を固めていた。
二・四変化弥生の花浅草祭
松緑の武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精、愛之助の神功皇后/善玉/通人/獅子の精
松緑と愛之助がこうして二人で踊るのは初めてだそう。そういえば同じ芝居に出ることもあまりなかったかも。
二つ目の「悪玉・善玉」と最後の「石橋」はそれぞれ単独で観たこともあるが他は初めて。それぞれ全く違った趣の踊りだが、二人が息のあったところを見せてなかなか楽しめた。特に松緑の踊りがきりっとして粋で上手い。獅子の毛振りもやはり松緑の方に勢いがあって一日の長が見られる感じだったが、愛之助も身のこなしが柔らかくきれいな踊り。これからこのコンビも面白そう。

この記事へのコメント
菊之助ちゃん、新しい魅力発揮という感じでしたね。これからどんどん引き出しを増やしていかれるのが楽しみです。